12月定例会の質問最終日
令和6年12月定例会の代表&一般質問が本日11日、最終日を迎えました。登壇した4名の県議のみなさんは、それぞれ県政の喫緊の重要な課題をしっかりと散りばめた項目を、説得力ある中身の濃い文章にまとめ、滑舌よく時間配分も見事にこなしきっていて、とても勉強になりました。
【勝俣昇(64=自民改革会議)】
1 次世代エアモビリティーの推進について
2 富士山噴火による降灰処理の検討について
3 地域産業の活性化に向けた県産日本酒の振興について
4 次期東富士演習場使用協定の締結に向けた県の取組について
5 富士山一周サイクリングルートのナショナルサイクルルート指定に向けた取組
について
6 地域医療提供体制の維持について
7 献眼運動の推進について
【木内満(44=自民改革会議)】
1 知事の政治姿勢について
o 東部地域の医療の未来像
2 持続可能な本県林業の在り方について
(1)林業政策の方向性
(2)担い手の育成の強化
3 富士山の登山規制について
4 盛土等の規制に関する条例等検証特別委員会の提言を踏まえた対応について
5 多様な役割を担う交差点名標識の適正な更新について
6 闇バイト等を通じて若者が犯罪加害者になることを防ぐ対策について
【小長井由雄(71=ふじのくに県民クラブ)】
1 知事の政治姿勢について
o 県民感情に配慮した県政運営
2 県土強靱化に向けた土木技術職員等の不足対策について
(1)適切な人員配置
(2)人材確保対策
3 持続可能な農林業に対する取組について
(1)本県農業が直面する課題解決に向けた取組
(2)県民の生活を守るための森林整備と県産材利活用の推進
4 リニア中央新幹線工事への対応について
5 太陽光発電における2030年問題について
6 原発事故と自然災害との複合災害時の避難計画の実効性について
【増田享大(57=自民改革会議)】
1 (仮称)医科大学院大学について
2 リニア中央新幹線建設工事に対する盛土規制の在り方について
3 熱海土石流災害エリアにおける再崩落への対応について
4 茶の輸出需要に応じた生産構造への転換について
5 森林経営管理制度の活用に向けた市町支援について
6 小笠山総合運動公園の魅力向上について
【5日の代表質問の記録⑤】
『4.わたしの避難計画の活用について』伺います。
本年8月に、史上初めて南海トラフ地震臨時情報が発表されました。幸いにして巨大地震の発生には繋がりませんでしたが、県民にとっては、日頃からの地震への備えの重要性を改めて実感するきっかけとなりました。
一方で、地震臨時情報の認知度が高くなかったため、不安に駆られ、慌てて水や食料を買いに走った県民もいました。必要時には、誰もが防災や災害に関する正確な情報を取得できるようにしておくかは、平時の課題であると感じたところです。
県は南海トラフ地震や、近年頻発化・激甚化している風水害から、県民が自らの命を守るための事前対策として、身の回りの災害リスクに備え「どのタイミングで」「どこに」避難するかを整理して、目の付く場所に貼っておく「わたしの避難計画」の作成を呼びかけてきました。
現在も、県内全市町・全地区にフォーマットを配布すべく、県と各市町が連携して取り組んでいますが、私の周りでもまだまだ知らない人が多く更なる周知が必要と考えます。
さらに、県によると、目標とする全戸配布については、来年度に完了する見通しが立っているとのことですが、今年度だけでも3千2百万円の予算を投じていることからも、配布して終わりではなく、防災訓練時等で実際にいかにして県民に活用していただくかということが、より重要だと考えます。
つきましては「わたしの避難計画」について、県の現状と今後の方針を伺います。
【酒井危機管理部長】
わたしの避難計画の活用についてお答えいたします。
災害対応の基本は自助であり、避難行動のよりどころとなるのがわたしの避難計画であります。県では令和7年度までに県内全市町・全地区での普及を目指し、昨年度までに県下5169地区のうち2129地区で配布を行い、更に今年度中に約1400地区に配布する予定です。
県民への周知や作成促進に向けては、年間を通じて自治会や学校等で作成講座を開催しているほか、防災指導員等の地域の防災人材を対象に普及員養成講座を開催しております。
また、12月1日の地域防災訓練でわたしの避難計画を作成・活用いただけるよう、全ての自主防災組織に対し呼び掛けたところ、現在把握している範囲で、10市町54地区で取り組んでいただきました。周知につきましては、コンビニ4社の1600を超える店舗に、作成を呼び掛けるポスターを掲示いただくとともに、ユーチューブ広告やSNS等を活用し広報するなど、全県民への普及に全力を挙げております。
わたしの避難計画は、各家庭における状況の変化等に応じて、常に見直していくことが必要であり、きめ細かで粘り強い取組が必要です。
県といたしましては、各家庭への配布が完了する令和7年度以降も、市町と連携して、わたしの避難計画が着実に取り組まれていくよう、一層促進を図ってまいります。
『8.本県産のお茶の新たな価値創出に向けた取組について』伺います。
家計調査における1人当たりの緑茶購入量は、全体として減少傾向が続いており、リーフ茶主体の本県の茶業は苦戦が続いています。
一方、令和5年における緑茶の輸出額は292億円で、対前年比133%となり、本年も過去最高ベースで推移するなど、好調を維持しています。
好調な輸出需要に対する有機栽培への転換を推進することはもちろん必要であることは理解しておりますが、国内外問わず、茶の振興策として茶のもつ新しい魅力や価値をもっとPR、開発していくことが重要と考えます。
例えば他県に目を向けると、佐賀県の嬉野茶は独特の丸みを帯びた玉緑茶の希少価値をPRし、高価格によるサービスの提供を可能としています。またカテキンといった機能性成分を生かした機能性表示食品が多数販売されており、茶の新しい価値をPRした商品も増えてまいりました。
このように地域や産地の多種多様なお茶、他の食品にはない茶の機能性といった魅力を開拓・開発することで付加価値を高める販売戦略も必要ではないでしょうか。
本県においては、菊川市の茶業研究センターで技術開発した香り緑茶を、牧之原市の茶農協が生産・販売するなど付加価値を高める取組がされています。また、その茶業研究センターのオープンファクトリーにおいて新たな商品開発に向けた支援を行っていると承知しております。
リーフ茶の需要回復がなかなか見込めない現在、本県の茶業振興・消費拡大には、地域の力や茶のもつ魅力を生かした製品づくりなど、新たな価値を創出することが重要と考えております。県としてどのような取組を進めていくのか伺います。
【田保農林水産部長】
本県産のお茶の新たな価値創出に向けた取組についてお答えいたします。
本県茶業の振興を図るため、令和2年に立ち上げたChaOIプロジェクトでは、お茶の需要動向を踏まえた出口戦略を実践するChaOIフォーラムと、先端技術の研究拠点である茶業研究センターとの連携により、お茶の持つ多様な価値と新たな需要の創出に取り組んでおります。
これまでに、ChaOIプロジェクトでは、フォーラム会員相互の技術や知識を結集し、スパークリングティーや快眠を促すアイスなどの新商品を開発するとともに、茶業研究センターの開発技術を利用した高GABA(ギャバ)茶など、魅力ある商品を開発してまいりました。
また、来年4月にChaOI-PARCとして開所予定の茶業研究センターでは、高温高圧抽出装置などの加工設備を導入し、サプリメントや化粧品原料等の新分野の研究開発を進めることとしております。さらに、これらの最新設備をフォーラム会員にも開放し、新たな商品づくりを支援してまいります。
県といたしましては、多様な業種が集まるChaOIフォーラムと機能強化したChaOI-PARCの相乗効果により、引き続き本県産のお茶の新たな価値を創出し、本県茶業の振興とお茶の消費拡大に取り組んでまいります。
『9.若者のUIターン就職の促進について』伺います。
人口減少や高齢化が進む中、物流業などの「2024年問題」が話題となったことが記憶に新しいですが、人手不足の問題は、特定の業種だけではなく、多くの産業分野に共通する大きな課題であります。
これまで国において、地方創生として10年にわたりこの課題に取り組んできたところですが、地方の人口減少には歯止めがかかっていません。
本県では、高校卒業後、約半数の学生が大学へ進学していますが、その約7割の学生が県外へ進学するなど、進学や就職を機とした首都圏への若者人口の流出が続いており、一度、県外に出て行ってしまった若者は、なかなか戻ってこないという現実があります。
県では今年度、これまでの取組に加え、国の動きにあわせ「地方就職学生支援金制度」を創設し、大学生の地方への就職を後押しする取組も始めたところですが、これは全国的に取り組まれている制度であり、他県からも若者を呼び込むには不十分であるように想います。
また、近年の本県へのUターン就職率の減少をみても、本県の暮らしやすさや首都圏にはない本県の魅力が、県外の若者に十分に伝わっていないのでないかと感じております。
将来にわたり本県産業の活力を維持するためには、働き手の確保が喫緊の課題であり、そのためには、若者のUIターン就職促進が重要であることから、企業の魅力に加え、日々の生活や趣味の充実といった観点においても、若者に本県の魅力を訴えていく必要があるものと考えます。
そこで、若者のUIターン就職促進に向けた県の取組と今後の方針について伺います。
【村松産業経済部長】
若者のUIターン就職の促進についてお答えいたします。
本県は、多彩な産業が集積するとともに、移住希望地として4年連続でトップを誇るなど、自然環境や暮らしやすさといった地域の魅力に満ちあふれております。議員御指摘のとおり、企業情報に加え、こうした魅力を本県の若者にいち早く伝えることで、県内大学はもとより、県外大学で学ぶ学生を県内企業への就職に結び付けることが重要であります。
このため、一部の市町では、地元企業や地域の魅力を理解するための取組が行われておりますが、こうした取組が県内全域に広がるよう、来年度は教育委員会や県内企業、商工団体等と連携し、高校や小中学校の児童生徒を対象に、職業体験や出前講座などを実施してまいります。
一方、県外の若者に対しましては、東京にある静岡UIターン就職サポートセンターを県移住相談センターに併設し、就職と移住をワンストップで相談できる体制を整え、実際に、趣味のキャンプをきっかけに、本県に移住・就職した事例も出ております。また、Iターン就職した人が、趣味や食生活などの面でも充実した日々を送っている様子を、SNSで紹介するなど、県外出身者の呼び込みにも努めております。
県といたしましては、県内の児童生徒の地域への愛着心の醸成に注力するとともに、県外の若者に対しては、本県の魅力をこれまで以上に積極的に発信し、UIターン就職を促進してまいります。
『10.外国人が暮らしやすく活躍できる社会づくりの実現に向けた取組について』伺います。
本年1月1日現在の日本の人口を見ると、日本人の人口は1億2400万人余りと15年連続で減少した一方で、外国人の人口は初めて300万人を超え、調査を開始した平成25年以降で最多となりました。
同様に本県でも外国人県民の人口は前年比108.7%の11万5千人余りで、過去最高です。ちなみに、私が34年連れ添っている糟糠の妻もその1人であります。
本年6月「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、従来の技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度が抜本的に見直され、我が国の人手不足における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されました。
これにより、新たに本県に在住する外国人が、さらに増加することが予想されます。
本県では、1990年の入管法改正以降、外国人労働者が急速に増えたこともあり、多文化共生に関する先進地域として、他県よりも進んだ施策を進めているところもあると理解しています。
人口減少社会において地域社会を維持していくためには、在住外国人のみなさんの活力や協力は欠かせません。菊川市や吉田町のように、外国人住民の割合が既に人口の約8%にも及ぶ市町もあります。
そこで、地域の力となり得る存在である在住外国人県民がさらに暮らしやすく、活躍できる社会の実現に向けて、どのような取組を進めていくのか、県の方針を伺います。
【鈴木知事】
外国人が暮らしやすく活躍できる社会づくりの実現に向けた取組についてお答えします。
本県は、外国人の増加に伴う様々な課題に対応するため、平成20年に全国で2番目となる「多文化共生推進基本条例」を制定し、多文化共生施策を総合的に推進してまいりました。
具体的には、外国人県民への日本語教育と「やさしい日本語」の普及・活用によるコミュニケーション支援、「多文化共生総合相談センターかめりあ」の充実による生活支援、多言語での災害情報の提供や企業と連携した防災講座による危機管理体制の強化等に取り組んでいるところです。
人口減少社会において、本県の活力を維持・伸長するためには、外国人の活力取込みが不可欠であります。外国人を単に労働力や支援対象としてではなく「まちづくりを進める重要なパートナー」と捉え直し、同じ県民として活躍できる社会を作っていくことが必要であります。
その際、県として必要な支援を行いながら、生活に身近な市町においても、外国人が暮らしやすい環境整備を進めることが重要であります。7月には、県と市町が共通課題を検討する「行政経営研究会」に、多文化共生をテーマとする検討会を設置いたしました。その中で、外国人への日本語教育や不就学ゼロ等の取組が進むよう、市町の課題に寄り添った伴走支援を行ってまいります。
一方で、多文化共生は全国的な課題であることから、国が責任を持って取り組むべきと考えます。そこで、11月20日に、内閣官房に対し、多文化共生施策の基本法の策定と各省庁の司令塔となる組織の設置等を要望いたしました。加えて、全国知事会においては、外国人育成就労制度への移行と多文化共生社会の実現に向けて、全知事が連携して、国へ提言を行うプロジェクトチームの設置を提案し、同月25日に認められたところです。
私は、これまで、この国の将来を見据え、「文化的多様性を活力・成長の原動力にしたい」と、情熱をもって取り組んでまいりました。
国の検討状況も注視しながら、引き続き、外国人が暮らしやすく、活躍できる社会の実現に取り組み、外国人から選ばれる静岡県を目指してまいります。
『11.健康寿命の延伸に向けたフレイル対策』について伺います。
本県の健康寿命は全国トップレベルですが、平均寿命との間には男性が約8歳、女性が約10歳の差があります。人生百年時代の今、健康寿命を更に延ばしていくことが求められています。
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に外出や外部との交流を控えていたことにより、体を動かす機会や社会との関わりが減少し、足腰が弱まり、認知機能が低下している高齢者は、少なくありません。
高齢の県民の筋力や心身の活力が低下し、要介護一歩手前の様相を意味するフレイルの状態に陥らないよう、いつまでも元気に生き生きと活躍いただくための対策を講じる必要があります。
高齢者の社会との交流の場である「通いの場」は、県内に約4600箇所あり、運動、会食、趣味の集まりなど、様々な活動が行なわれる多くの高齢者が集う場となっており、フレイル対策を実施する上で最適な場であると考えます。
一方で、様々な理由で通いの場に参加出来ない方への支援も必要です。そこで、県として高齢者の社会参加や運動の機会の拡大に向け、こうした通いの場の活用など、どのようにフレイル対策に取り組んでいくのか伺います。
【青山健康福祉部長】
健康寿命の延伸に向けたフレイル対策についてお答えいたします。
高齢者のフレイル対策には、「運動」「食事」「社会参加」の3つが重要であり、これらを効果的に提供できる身近な場所として、「通いの場」が重要な役割を担っておりますが、参加率は高齢者人口の8.0%であり、参加者を更に増やすためには、認知度向上に向けた取組が必要であります。また、足腰が弱く「通いの場」に来られない方や近くに「通いの場」がない方などにも運動等の機会を提供することが大切であります。
こうした課題に対応するため、県では、健康づくり応援サイト「ふじのくにむすびば」を令和3年度に開設し、「通いの場」の認知度向上に向けて、所在地や活動状況を紹介するとともに、「通いの場」に来られない方が自宅でできるご当地体操やヨガなどの動画配信を行っております。また、高齢者向けに、スマートフォンや健康アプリの使い方を紹介するページを併設したところ、サイトへのアクセス数は、開始当初から5倍超の2万8000件程と大幅に増加いたしました。
さらに、「通いの場」で栄養面や口腔管理面での効果的な取組を提供できるよう、そこで活躍する管理栄養士や歯科衛生士の資質向上に向けた育成研修に引き続き取り組むなど、「通いの場」を有効に活用しながら高齢者のフレイル対策の充実に努めてまいります。