濃厚で意義ある視察研修
静岡県議会会派の『防衛議員連盟』の九州視察研修最終日の午前は、福岡県築上町の『航空自衛隊築城(ついき)基地』に伺いました。
九州北部地域の領空に接近・侵入してくる国籍不明機に対しての対領空侵犯措置を担当している西部航空方面隊第8航空団の司令部です。
築城基地では、国籍不明機による我が国の領空侵犯の恐れがある場合に、たびたびスクランブル(緊急発進)が行われています。?
築城基地からは、東京と上海がほぼ同じ距離にあります。大陸方面から不明機が飛んできた場合は、真っ先に対応しなければいけない位置にある重要な航空基地です。?
航空自衛隊の戦闘機によるスクランブル発進の回数は、2023年度は669回でしたが…過去5年間で最少でした。
国別では、中国機が479回、ロシア機が174回、北朝鮮機が2回。中国機とロシア機が、全体の98%を占めているそうです。
本当に大変で深刻な任務を日常的に担っている基地ですが…昨日までの私を含め、ほとんどの日本国民は、この現状を知りませんし、意識することなく生活しています。
ロシアのウクライナ侵攻など、世界各地で今も途絶えることのない激しい戦火の報道に接することにも慣れてしまっているわれわれですが…
国民・県民・市民の生命と財産を守る使命を帯びている政治家の端くれとして、戦争を止められない愚かな人類の所業を「日々認識することは、自分の最低限の義務なのだ」と思いました。
3日連続で屈強な自衛隊員のみなさんと食堂で食べた昼食は、激務にさらされている若者用だからなのでしょう。。美味しいけれど、しょっぱかったです。
午後からは、福岡県筑前町の『筑前町立大刀洗平和記念館』を訪れました。
旧日本陸軍の大刀洗陸軍飛行学校と飛行場があった場所に、地元で建設業を営んでいた個人の力で1987年(昭62)に設立。その後、合併特例債を主な財源とし、2009年(平21)に、筑前町立の記念館としてリニューアルオープンされました。
旧海軍の零式艦上戦闘機三二型と九七式戦闘機は、世界で他に現存していません。実機としては、この他に純国産の多目的ヘリコプターMH2000が、屋外展示されています。
また、昨年公開の『ゴジラ-1.0』撮影のために製作された第二次世界大戦末期に大日本帝国海軍が試作した前翼型の独特な機体形状を持つ戦闘機『震電(しんでん)』の実物大模型を購入し、展示していることでも有名です。
1945年(昭20)3月の『太刀洗大空襲』の詳細な資料や、犠牲者の遺影や名簿も展示されているほか、この地で訓練を重ね大戦末期に神風特攻隊として戦地に飛び立ち、玉砕した10~20代の若き戦士たちの遺書や辞世の歌、家族に書いた手紙を読み、涙が出ました。
現代のハイテク戦争では、人の搭乗した特攻機の出る幕はありませんが…ドローンや長距離砲の進化や無差別殺人を目的とした自爆テロ等の横行により、世界各地で一瞬のうちに大量の命が奪われる時代です。
戦争は絶対に起こしてはなりません。しかし、現実に武力による国境線の変更や他国への侵攻を目論むとんでもない国家が存在する以上、われわれは丸腰でいられるワケがありません。
悲惨な歴史に学ばない人類の愚かさを嘆きつつ、絶対に使ってはならない防衛力の整備と、失ってはならない自衛隊員の確保と訓練…。悲しい矛盾とジレンマを強く感じ続けた視察研修となりました。
3日間で九州北部の6つもの防衛施設を訪問しただけでなく、昼も夜も幹部自衛官の方々と会食をしながら、国防について熱く語り合うことに特化した…濃密にして素晴らしい経験ができました。
視察を企画し、訪問地を決めてくだった元陸上自衛隊1等陸佐で、防衛議連会長の和田篤夫県議(御殿場市選出)に、心から感謝してます。