アフターコロナ特別委員会の提言
本日7日、静岡県内の新型コロナの新規感染者は「629人」と、1月18日以来約1カ月半ぶりに600人台まで減りました。4日連続で前週の曜日を下回りましたが…県の担当者は「減少傾向が続いてはいるが高止まりが続いていて、医療体制はひっ迫している状況に近い」と、引き続き感染症対策の徹底を呼び掛けています。
県全体の病床使用率は45.4%。地域別では東部が49.4%、西部が46.6%、中部が40.9%と、各地域でまん延防止等重点措置延長の判断基準となる「50%」を下回りました。
やっと第6波のピークを超えた間のある現状ですが…今年度私が所属した『アフターコロナ生活環境づくり特別委員会』が取りまとめ、本定例会に提出した提案書の内容をこの場でご報告いたします。
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【調査の概要】
当委員会は、「アフターコロナの安心して生活できる環境づくりに関する事項」を付託調査事項として令和3年5月20日に設置されて以来、6回にわたり委員会を開催してきた。
委員会では、現在執行部が行っている関係施策等について調査を行ったほか、新型コロナウイルス感染症による県内経済への影響、感染症の現状と今後の展望等の関係者を参考人として委員会に招致し、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた取組や課題、県の役割についての意見などを聴取した。
【委員会の運営方針】
第1回委員会において、次の2点を運営の方針として設定した。
・ 執行機関に対する調査に偏ることなく、委員間討議や参考人からの意見聴取、先進事例の現地調査等を積極的に実施する。(今年度も、コロナ禍を踏まえ、先進事例の現地調査を中止した)
・ 調査結果は、委員会の提言等として報告書にまとめ速やかに議長に提出する。また、直近の本会議で報告書を議場配付し、委員長報告を行う。
【調査の観点】
新型コロナウイルスの感染拡大は第4波(=当時)を迎えており、コロナ禍で人々の社会生活が大きく様変わりする中、社会的孤立の深刻化や失業者の増加など様々な問題が顕在化している。現在、県内においてもコロナ禍を収束させるためにワクチン接種が進められているところであるが、今後はアフターコロナを見据えて、県民の生活環境をいかに整えていくかが重要な課題となる。このような状況を踏まえ、アフターコロナの安心して生活できる環境整備に関する提言を行うこととした。
調査に当たっては、以下の点に着目した。
・大打撃を受けた経済の再生に向けた施策や失業者への対応などの雇用改善施策
・失業による引きこもりやテレワーク等の働き方改革、感染による誹謗中傷や社会的孤立などのメンタルヘルス対策
・二地域居住、移住定住や海外交流など多彩なライフスタイルを受け入れる取組
・高齢者の虚弱化の進行など外出自粛の長期化による影響等
・ オンライン授業など教育環境の変化や学習の遅れによる不登校等への対応
・ 継承が危ぶまれる無形民俗文化財等の継承基盤の整備
調査結果を踏まえ、当委員会として次のとおり提言する。
提言1 新たな価値観への対応
令和3年10月以降、新型コロナウイルスの感染状況は一旦は落ち着いていたものの、年が明けるや否や、オミクロン株による第6波が全国的に急拡大し、本県においても感染者が激増し、まん延防止等重点措置が適用され、医療提供体制の逼迫や経済活動の制限など再び深刻な影響が発生している。
感染拡大を早期に食い止めるよう対策を講ずるとともに、停滞している社会経済活動を活性化できるよう、コロナ後の社会を見据えた施策を検討する必要がある。
長期化するコロナ禍における行動制限やテレワークなどの働き方の変化などの様々な要因により、人々の生活・行動様式は大きく変化している。これにり経済的な豊かさだけでなく、家族と過ごす時間や健康で平穏な生活を送ることに、より大きな幸福を感じるなど、生命、家族、健康、安全安心、自然環境の保全、地域社会の振興等を大切にするための行動に価値を見いだす意識変化が県民に生じていることから、今後はこれらの新たな価値観に対応した施策を展開していくべきである。
提言2 新型感染症への対策
(1)医療機関の連携強化
新たな変異株等によるコロナの再拡大や新たな感染症が発生した時に備え、パンデミックは災害であるとの認識の下、医療提供体制を確保することが必要不可欠である。災害医療では、重症、中等症、軽症などの患者の状態に応じて効率的に治療する必要があるため、各医療機関の受入れ能力を見える化するために、各医療機関の病床運用状況を即時に画面で共有できるシステムを構築するとともに、各医療機関が役割分担の下で連携して治療に当たるための仕組みを作るべきである。
(2)医療人材の育成、確保
コロナ禍により感染症専門医の不足が顕在化するとともに、人工呼吸器の装着が必要な場合など救急医療分野の対応が必要なことも判明した。感染症と救急医療にも対応可能な医師をはじめとする医療人材の育成、確保に向けた施策を実施すべきである。
(3)医薬品、医療機器産業等への支援
ファルマバレープロジェクト等の推進により、県内の医薬品、医療機器産業等の生産活動は全国トップレベルにあることから、新型コロナのほか、新たな感染症のワクチンや治療薬の研究開発を行う事業者等に対し必要な支援を行うべきである。
提言3 コロナ後遺症への対策
(1)後遺症に関する理解の促進
感染から回復した後にも、強い倦怠感や息苦しさ、味覚・嗅覚障害、集中力の低下、関節の痛みや脱毛、睡眠障害、発熱、目まいなど、後遺症と見られる症状で苦しむ人が多いことが顕在化している。後遺症は一見して分かりにくいため、職場や周囲の理解が得られず、精神的にも苦しんでいる事例があることから、後遺症に関して社会的な理解が進むよう情報の周知に努めるべきである。
(2)医療機関に対する支援
一部の医療機関で後遺症外来が開設されるなどの取組が行われているが、いまだ後遺症の原因は解明されておらず、治療法も確立されていない。治療法や治療薬の開発に取り組む事業者に対する支援を行うとともに、後遺症外来など後遺症の治療に取り組む医療機関に対する必要な支援を行うべきである。
(3)後遺症に苦しむ人への支援
後遺症に苦しむ人の中には、長期間にわたり日常生活がままならないばかりか、働けなくなることで経済的にも困窮する事例があるため、後遺症に苦しむ人が安心して治療に専念できるよう経済的な支援を行うとともに、社会復帰に向けた必要な支援を行うべきである。
提言4 経済活動の再生に向けた対策
(1)消費者のニーズに対応した経済政策
コロナ禍により県民の消費行動や観光行動が変化し、ネット通販や内食などの「巣ごもり消費」や、リモート会議やワーケーション、マイクロツーリズムなどの「リモート・非接触」、マスクの装着や飛沫防止対策用品の使用などの「感染予防行動」が定着しつつある。また、消費行動を通じて地域社会に貢献しようという意識も高まっている。コロナの影響で落ち込んだ経済を再生し活性化させるため、これらの消費行動や意識変化を分析し、消費者ニーズを的確に捉え、今後の経済政策につなげていくべきである。
(2)事業再生に向けた金融支援等の施策
県内の中小事業者の経営は依然として厳しい状況にあり、国や県の制度融資により倒産は抑えられているものの、資金の借り入れは高水準にあるため、過剰債務に陥った事業者への返済猶予などの事業再生に向けた支援策を拡充するとともに、県と金融機関とが連携し、事業者の経営状況をしっかりと見ながら、事業者に寄り添った金融支援策等を検討すべきである。
(3)観光・宿泊業、飲食業等への支援
コロナ禍により、バス事業者を含めた観光・宿泊業、飲食業等は特に厳しい経営状況が続いており、早急な支援が必要である。「Go To イートキャンペーン」や「Go To トラベルキャンペーン」の事業効果を分析し、その結果を踏まえて、本県独自のキャンペーンを見直し、拡充しながら継続実施するなど、早期に効果的な需要喚起対策を講ずるべきである。また、ワクチン・検査パッケージについては、感染状況やワクチン接種状況等に応じ、実施方法を工夫するとともに、適時適切に運用を再開すべきである。
(4)雇用の改善の推進
コロナ禍により経済活動が停滞し、収入が不安定となったり、解雇、雇い止めなどにより失業する人が増加する中、失業者等が安定した収入を確保し、安心して生活を送れるよう、就業につながる効果的な雇用対策を行う必要がある。
失業者等のキャリアアップ、キャリアチェンジを支援するなど、実践的な職業訓練の機会を拡充すべきである。また、事業縮小に伴い従業員を削減せざるを得ない企業がある一方で、必要な従業員を確保できない企業があることから、人材不足企業と人材余剰企業のマッチングを積極的に支援すべきである。
(5)県内での教育旅行の実施勧奨
本県には、世界遺産である富士山を始め伊豆半島、駿河湾などの豊かな自然環境に加え、茶畑や様々な業種の工場など、業務体験や学習見学が可能な場所が多く存在する。さらに、都会から離れて密を回避でき、時間に追われることなく、ゆっくりと楽しみながら移動できる魅力がある。これらを活かし、バス事業者や文化・観光等施設、宿泊施設が連携した県内での教育旅行(教育旅行版地産地消)商品を開発し、県内外の教育機関、教育関係者にその実施を積極的に勧奨すべきである。
提言5 社会的孤立等困難な状況にある方への支援
(1)包括的相談体制の整備
生活困窮や雇用の不安、家族の介護に伴う悩み等、様々な生活上の課題を抱える人が増加している。また、こうした不安や悩みから、自死に至るケースも増加している。これらに対応するためには、一人一人の状況に合ったきめ細やかな支援が必要となることから、相談者の属性や世代、相談内容に関わらず包括的に相談できる体制が県内の全ての市町で早期に整備されるよう支援を行うべきである。
(2)社会的孤立解消に向けた取組
コロナ禍による失業をきっかけとしたひきこもりや、テレワーク等の普及によるコミュニケーション不足、コロナ感染に係る誹謗中傷等により、人々の社会的孤立が深刻さを増している。社会的孤立が生じる要因や当事者の置かれている環境、数的状況等の実態を調査し把握するとともに、当事者やその家族などが相談しやすい体制の構築や、就労支援サービス、学習支援サービス等と医療サービスとを連携させ、社会的孤立を解消する取組を実施すべきである。
(3)子どもを養育する保護者への支援
オミクロン株は、これまでのものと比較して子どもへ感染する割合が高い。子どもへのワクチン接種の有効性や安性については、様々な情報があることから、ワクチン接種についての不安を抱く保護者も多いため、子どもに接種するか否かについて、保護者が適切に判断できるよう、ワクチン接種の効果や副反応等について正確な情報を提供するとともに、基礎疾患等があることによりワクチンを接種できない子どもが、誹謗中傷を受けることがないよう必要な対策を行うべきである。
また、子どもの感染やそれに伴う休園や休校等により、子どもの保護者が仕事を休まざるを得なくなる状況にあるため、企業が通常の有給休暇とは別に、有給の特別休暇等を取得できる制度を導入するために必要な施策を実施すべきである。さらに、子ども以外の家族が感染し、親族などが身近にいない場合、子どもの預け先が課題となるため、預け先等について相談できる窓口の設置や、医療機関による親子入院の対応や児童養護施設等での受入れなどの対策により、親子が安心して療養できるよう支援を行うべきである。
(4)お互いを認め合う心の醸成
お互いの立場に立った思いやりある行動ができるよう、お互いを認め合う心の醸成に向け、学校での教育、企業や行政における職員向けの研修など「心のユニバーサルデザイン」を推進する施策を拡充すべきである。
(5)正確な情報提供への協力
一部のメディア、SNS、インターネット等によるワクチンや治療薬、後遺症などに関する不正確であったり、偏った情報が、いたずらに人々の不安をあおり混乱を招いたり、心ない誹謗中傷につながったりする状況がある。県民が安心して生活することができるよう、正確かつバランスのとれた情報を提供するよう報道関係事業者に協力を求める必要がある。
提言6 多彩なライフスタイルの支援
(1)移住・定住の促進
コロナ禍による産業構造の変化に加え、人々の働き方が変化する中、これからのキャリアを見据え、転職する若者が増えている。また、家族の介護をする人や子育て中の女性など、様々な事情で労働を継続することができない人がいる。若い世代や子育て世代が、それぞれの事情に対応しながらも働きやすい環境を整備することで本県内への移住・定住の促進を図るため、テレワークや副業兼業等も含めた働き方全般について、県内事業者と連携し、本県独自の誰一人取り残さない、魅力ある働き方を研究し、普及させることを検討すべきである。
(2)移住体験地域の整備
コロナ禍によりテレワークやワーケーション、二地域居住等の新しい働き方・暮らし方が普及し、人々の都市部から地方への移住に関心が高まっている。これを契機に都市部からの二地域居住者や移住者の増加を図るため、本県
内にモデル地域を設け、移住・定住を検討している人が移住体験をすることが可能な施設を整備すべきである。
提言7 無形民俗文化財の継承への支援
(1)地域の伝統文化への支援
コロナ禍により無形民俗文化財である地域の祭りなどの実施の自粛が相次ぎ、その継承、存続が危機的状況にある。民俗芸能や伝統行事の実施・継承を通じた地域コミュニティーの絆を維持するため、地域の祭り等の現状を把握し、継承・存続が危ぶまれるものについては、運営団体への助成や後継者養成に対する支援など、地域の伝統文化が途絶えることのないよう早急な支援を検討すべきである。
(2)地域の伝統文化に対する機運の醸成
文化財の継承・存続に対する意識を醸成するため、地域の伝統文化等に既に携わっている人だけでなく、これまで興味がなかった人にもその魅力や重要性を感じてもらい、新たな継承者となることにつながるよう、民俗芸能等を広く一般向けに周知する機会や体験イベント等を実施することにより、より多くの人が伝統文化を身近に感じる機会を創出すべきである。
提言8 教育現場における対策
(1)差別的言動の防止
感染拡大により緊急事態宣言等が発令されている地域に勤務する家族がいる家庭や、当該地域に習い事に通っている子どもに対して、周囲からの誹謗中傷や、学校側からの登校自粛要請があった事例が発生している。教育現場においてこのような差別的な言動をなくすよう取り組むべきである。
(2)ICTを活用した支援
コロナ禍を機に加速した教育DXを推進し、AI教材や反転学習のための資料の充実等、一人一台端末を活用した取組を実施するとともに、端末を各家庭や保護者とのつながりに活用してコミュニケーションを促進し、児童・生徒や保護者が気軽に学校教育や家庭教育に関する相談ができる支援体制を構築すべきである。また、不登校児童・生徒やその家族の不安を解消し、主体的に社会的自立や学校への復帰ができるよう、訪問型支援に加え、端末を活用したオンラインによる支援を強化するなど、児童・生徒が誰一人取り残されることのないよう取り組むべきである。
(3)オンライン授業の改善と対面授業の実施支援
大学ではオンライン授業が未だ継続され、対面授業など効果的な教育実施体制の整備が遅れていることから、退学者の増加や修学意欲の低下といった問題が発生している。対面で授業を行わないことの影響を調査し、オンライン方式で授業を行う場合の改善策を検討するとともに、オンライン授業、対面授業それぞれの利点を生かし、オンラインと対面とのバランスのとれた方法で、学校側が早期に対面授業を実施できるよう必要な支援を行うべきである。
(4)困窮世帯の学生等への支援
コロナ禍による経済的困窮や学生生活への不適応、修学意欲の低下などを理由に、大学や短大、高等専門学校を中退、休学する学生が増えている。困難な状況を抱える学生が相談できる体制を整備するとともに、県内出身の困窮世帯の学生に授業料等を支弁する等の支援策を検討すべきである。また、やむを得ず中退した者の復学に向けた仕組み作りを検討するとともに、必要な事項について国に要望すべきである。
パートナーは、マロからリラに代わっても…10年前と表情と優しさは、ちっとも変わらない我が家の愛犬カロ(雑種=12)です!(*´ω`*)