御榊神事と寄木細工
今年も、牧之原市菅山区菅ケ谷に中世から伝承されている『一幡(いちまん)神社の御榊(おさかき)神事』来ましたに、行ってきました。
平安時代の第69代朱雀天皇の御代の長暦2年(1038)に建立されたという古い神社を舞台に、古来この時期の3日間に渡って行われるこの神事は…『二十八名(=みょう。苗とも表記される)』と呼ばれる28軒の名家が、交替で祭りを執り行ってきましたが…
近年の過疎化や少子化で名家の断絶や辞退が相次ぎ、ついに3年前から、全ての神事の儀式を保存会のみなさまが、各名家ではなく、みんなで一緒に、一幡神社で実施することになりました。
さらに昨年、そして今年もコロナ禍で、行事はさらに簡素化。榊の葉をくわえた7人でついた餅を賽の目に切って簀子(すのこ)に包む『御榊様(おさかきさま)』は、作りますが…感染予防のため、氏子に配る牛の舌の形のお餅は、業者に委託。最終日恒例の集落廻りも中止となってしまいました。
類似する行事は全国でも数えるほどしかない極めて珍しいこの神事は、静岡県の無形民俗文化財に指定されています。私が取材するようになった4年間で、内容も儀式も大きく様変わりしましたが、コロナ第5波の真っ只中でも開催してくださった保存会のみなさまには、心から感謝しています。
かつての御榊神事の様子は…⇒こちら!!
一幡神社の後は、次男晃司アントニオとともに、神寄区大寄に移動して、先日の『令和3年度県すこやか長寿祭』の美術展の工芸品の部で、最優秀賞の県知事賞を受賞された鈴木辰哉さん(69)の工房と秘蔵作品の数々を見学にいきました。
大工が本業の鈴木さんが、さまざまな材木の切れ端を「このまま捨てちゃうのはもったいないなー! 何かに使えないかな?」と独学で始めた〝寄木細工(絵画)〟の精密で鮮やかな出来栄えに、親子で感心しました。
手先が器用で、骨とう品、歴史を感じるアンティークな小道具の修理やコピー製作が大好きな晃司は、目を輝かせて1つ1つの作品を鑑賞したり、工房内にずらりと並んだプロ仕様の電動糸鋸などの機材の数々を凝視していました。
これから先のことは分かりませんが…古来、日本人の伝統文化や匠の技は、きっとこういう形でも、世代を越えて伝承されてきたのかもしれないな? と想いました。
息子が好奇心と興味を膨らませて、いずれ鈴木さんに弟子入りしてくれたら…うれしいです。