「全量戻せば大丈夫」なの?
昨日のリニア中央新幹線南アルプストンネル工事を巡る国土交通省の『第13回有識者会議』でまとめられた中間報告について、今朝の新聞各紙が大々的に取り上げていました。
主な新聞の大見出しを比較してみると…
静岡:「水量維持」JRの予測は不確実
朝日:リニア工事「地元に真摯な対応を」
中日:湧水全量戻し示さず。地下水影響「小さい」
日経:リニア工事「河川流量は維持可能」
毎日:リニア工事「地下水量に影響小」
会議後の記者会見で、有識者会議の福岡捷二座長(中央大学研究開発機構教授)は「全量戻せば河川流量が維持されて、そして地下水もほとんど変化が非常に小さいというのが、私どもこの委員会の結論であります」とコメントしたということで…どうやらJR東海に対して「静岡県と流域市町が要求しているように、工事中にトンネル内に湧出する地下水もちゃんと集めて大井川に流すようにしなさいね」と指導するようです。
トンネル工事による大井川源流域の地下水の減少量は、不確実性などのリスクがあるものの「年間0トンから1億トン」と推定され、毎年の季節による変動の9億トンから15億トンに比べ「極めて小さい」と表現されています。
これを受けて静岡県の難波喬司副知事は…「工事中に大井川流域外、山梨側に水が流出する問題についての対策という中身は示されていませんので、その部分だけをとると、これは受け入れられないということになると思いますけれども、全体としての中身について評価をするとすれば、これは十分受け入れられる内容だと思っております」と非常にあいまいな表現ながら、有識者会議の中間報告にかなりの好評価を与えたように感じます。
これにより、中断していたJR東海との対話を再開する考えを示しました。
国交省、JR東海、そして静岡県の3者が、それぞれ今回の報告書の内容に同意し、今の膠着状態の打開に向けて、少しでも前進してくれることになれば、うれしく思いますが…
そもそも静岡工区の8.9kmのトンネル内に湧出すると想定される地下水は、南アルプス山脈の広大な斜面に降った雨水であり、そのすべてが大井川の源流に注ぎ込むわけではありません。全部が大井川の河床の伏流水となって下流域まで流れて行くわけでもありません。今までは、そういう議論や報告が、ずっと行われてきていました。
しかし、1年8カ月にも及んだ専門家による有識者会議の結論のキモが…「トンネル内に出てくる水を全量戻せば大丈夫だから…JRは地元の不安が払しょくされるように、真摯に継続的に対応してくださいよ」だというのは、これまでずっと、この会議を一所懸命に傍聴してきた流域地域代表の県議としては、正直「何だかなあ…」「論点はそこなの?」と思わざるをえません。
たとえ、今後本気でその線で進めるとしても…トンネル工事がある程度進捗し、内壁が耐水性を持つように固定化された時点であれば、湧水の全量をポンプアップして、新設する導水管に送り、大井川上流の椹島に流し込むことは技術的には十分可能でしょうが…知事や副知事が固執して要求している「工事開始時からの全量戻し」の実現は、困難を極めるだろうと、私は危惧しています。
<静岡新聞1面より>