正解析と逆解析
『令和3年度大井川の清流を守る研究協議会』の総会に、今年も『相談役』に名を連ねる13人の県議会議員の1人として、ご招待いただきました。
2000年(平12)に、大井川流域の当時榛原郡の8町(本川根、中川根、川根、金谷、吉田、榛原、相良、御前崎)が「かけがえのない貴重な大井川の水資源を守り、後世に引き継ぐため」に結成した歴史ある協議会です。
平成の市町合併や新規加入を経て、今は旧志太郡、小笠郡を含む5市2町(島田、牧之原、御前崎、菊川、掛川、川根本町、吉田)の首長と議長で構成している会ですが…本日新たに昨年から準会員になっていた焼津、藤枝、袋井の3市の首長・議長の正会員加盟が承認されました。
総会後の第2部は、静岡県の難波喬司(たかし)副知事(65)による『「解析モデルには解析精度に限界がある」についての直感的理解のために』という難解なタイトルの特別講演でした。
工学博士でもある難波副知事が…熱海の土石流災害の話題を織り込みながら、リニア中央新幹線トンネルにおける各種データの解析や、事前協議と流域住民の理解を得る説明の重要性についての持論を大展開されました。
その講演の大部分は、優秀な理系のエンジニア集団であるJR東海のリニア開発、リニア担当部門のエリートたちが陥っている『正解析』の問題点の解説でした。正解析とは「原因から結果を導く(推定する)解析法」だそうで…難波副知事に言わせればJR東海は「トンネルを掘ったら、水が減るのか?」という結論得るために、未来や自然界に起こるさまざまな不明点(不確実性)を十分に調査、解析を行わないまま、自分たちの都合のよいように「そんなことは起こるはずもありません」と断定してしまっているのだそうです。
一方、県や一般県民は「過去の結果から原因を推定する」という『逆解析』で未来を見ている。すなわち「かつてトンネルを掘ったら、水が減ったことがあった。今回もトンネルを掘れば、また水が減るだろう」という考え方です。その当然な不安を払拭するには、自分たちが定めた前提条件だけで解析するのではなく、50年に1度、100年に1度の気象条件も考慮の上で、それでも大事には至らない程度のレベルまで、様々な可能性や危険性を予測するべきだというのです。
なかなか奥の深い、もっともな考え方だと感心しました。最後の質疑応答で牧之原市の杉本市長が「その考え方は県の公共事業にもあてはまるのか?」と鋭い質問を行うと…難波副知事は「想定以上の降雨や地震など対する検討が何処まで行われているかの情報を公開しないJRとは違う。県が行っている社会インフラの空港や道路の工事では、安全率を高く設定すると共に、その根拠まで公開されていることで様々な機関で検証が行われているので大丈夫です」と答えました。
本当にそうなのか? 県の公共工事は確実に安全なのか? 1時間以上もドヤ顔で話し続けた難波副知事の絶対的な自信はどこからくるのか? 本物なのか? 私は、これからの県の動きや主張をこれまで以上に注視したいと思います。
なお…講演前に私は難波副知事のもとに歩み寄り、先日のお茶に関する私の一般質問の真意を説明させていただきました。「科学的根拠が大切なことは分かっています。でも、県が自分から言い出した研究の成果を、他府県が学会に提出して認められてからも、まだ公表すらしないことはおかしいし、大問題でしょう?」と言わせていただきました。これには副知事も苦笑いで「それは、どうもすみませんでした」と答えるだけでした。