田代ダム問題を検証!
現地で感じた素朴な疑問!!
24日に、私がリニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区の最前線を弾丸視察したことを知った山好きの友人から…「大井川の水と環境のことを考えるのなら、田代ダムから発電のために大井川の水を送っている山梨県の早川(富士川支流)も見た方がいいですよ。私、今日行ってきました」というメッセージと映像と写真が送られてきました。
先にお断りしておきますが…リニアトンネル工事の着工の是非に関する私の私の基本的な考えは、川勝知事を始め、大多数の静岡県民が抱いている感情と同じです。
それは、すなわち…「県がトンネル建設着工を認めるためには…JR東海が、牽強付会で我田引水の主張を改め、正しくて説得力のある資料を公表して、県民・国民が納得するような説明を行うこと。そして大井川流域の水や環境への影響をできる限り軽減することを約束し、事前に対策を講じた上で、万が一の場合の補償を約束し、大多数の流域住民の理解を得なければならない」というスタンスです。
その上で、今回の現地視察によって、自分自身で目視した現実と見聞きした情報によって、はっきり認識できた問題点とこれまで胸の内に溜まっていたある種のモヤモヤ感について、意見を述べてみたいと思います。
今は冬場の渇水期です。最深部の西俣ヤード周辺では、山肌からの湧水は凍っていましたが、川の水は流れていました。数km下流の田代ダムも満々と水をたたえていましたが…そこから下流の赤石ダムや畑薙第一ダムに至る区間はあちこちで川枯れが起こり、水が見えない箇所があったのです。
私はこれまで、ご同行いただいた元島田市長の桜井勝郎県議が、どうしていつも目くじらを立てて川勝知事や県の対応を声高に非難されているのか? よくわかっていませんでした。
「トンネル工事で湧出する最大毎秒2㌧の地下水が〝命の水だ! 1滴も譲れない〟とJRに言うのなら、田代ダムから発電のために富士川水系に送られている毎秒5㌧の水だって〝命の水だ〟と東電に主張しないのか?」という桜井県議の主張を…「明治からの先人たちの英知と努力によって定められた東電の水利権と、事前調査も不十分のままで発生が危惧されるトンネル内湧水とは、話の次元が違う」とこともなげに一蹴した難波副知事の答弁に、特に違和感を感じませんでした。
しかし、です。実際に今でも発生している最源流部での水枯れの現実を見てしまうと…確かに「すべてが大井川の水になるとは限らないトンネル内の湧水2㌧/秒より、実際の毎秒川の水4.99㌧(=最大)の取水の方が深刻だろう?」という気持ちになるのです。
田代ダムでは、完成当時の1928年(昭3)当時は毎秒2.92㌧だった取水量が、1955年(昭30)から下流の自治体には無通告で4.99㌧に増量されたことで、川の水が干上がり…いわゆる〝水返せ運動〟が勃発しました。
そこから長年にわたる交渉と2万人以上の署名をバックに、当時の石川知事自らが直接東京電力本社を訪れて直談判して妥結を迫ったこともあり、2005年(平17)に東京電力は結局要望に近い形での放流量を提示して水利権交渉は妥結。現在は、季節ごとに決まっている毎秒1.49~0.43トンの河川維持流量は、ダムで取水せずに下流にそのまま流しているのです。
JR東海は当初、静岡工区の約25kmの「トンネル内で発生する湧水の全量を大井川に戻す」と約束しました。その後「工事期間中は山梨、長野側に流れてしまう水までを戻すのは難しい」と前言を翻したことで、猛烈な非難を浴びているわけですが…。
とにもかくにも、トンネルの湧水を自然流下で恒久的、確実に大井川に戻す「導水路トンネル」の出口をトンネルの工区から約12㌔南の椹島(さわらじま)ヤード脇の大井川と設定し、現在準備を進めています。今、水枯れしている田代ダムの下流よりずっと南なのです。
田代ダムからの水が、2つの発電所の水路を通って、富士川水系の早川へ潤沢に流れ出ている映像を見ながら…「大井川の水と環境問題は、田代ダムの建設が始まった大正時代からの永遠の課題なんだなあ…」と実感しました。。
これまでの経緯や大井川最源流の現実を軽視して、田代ダムの存在や問題点をないかのように扱うことは〝公正〟ではないと思います。かといって、私は「大井川の流量減少問題は、田代ダムの取水量調整で解決できる」という一部の意見には必ずしもくみしません。
それでも、県には「リニア工事によって田代ダムの水位も下がるかも?」と不安を煽るだけでなく、このダムによって長年発生している事実も併せて、流域住民や全県民に詳しく説明する義務と必要性があると、確信しています。