外国人と地域の未来
牧之原市の同級生から相談を受け、菊川市にあるブラジル人家庭を対象にした託児所(認可外保育所)『NPO法人ミライ』を視察してきました。
理事長で日系2世の黄地 潔 (Kiyoshi Tania Ochi) さん(56)が5年前に設立したこの託児所は、両親または片親がブラジル人で日本語をほとんど解さない1~5歳の未就学児や、来日直後で日本語能力が足りず、地域の小中学校に通うことができない児童ら総勢約60人を受け入れ、日本語や日本の文化、ルールを教えるというとても貴重な役割を担っています。
ミライでは常勤、非常勤を併せて17人のスタッフが毎日9台の車で、東は牧之原、西は袋井までの子どもたちを送迎し、朝7時から午後5時すぎまで共働きの両親に代わって子どもたちのお世話をし、読み書きやしつけまでを教えています。
送り迎えのサービスに加え、月曜から土曜まで子どもたちに朝食と昼食、おやつまで提供するため、毎月の月謝(利用料)は1人5万円(2人以上は4万5000円)します。
ところが、静岡県が掲げる『多文化共生社会の実現』に不可欠な存在であり、これからの日本の人口減少や労働力不足の解消の一策として今後ますます必要な施設であるにも関わらず、特定の外国人幼児・児童に限った認可外保育所ということで、菊川市から支給される年間15万円の補助金以外、行政からの財政的支援が全くありません。
ほとんどが、日本に移住する決意と覚悟で、チケット代とすぐ住めるアパートの斡旋代を1人34万円(子どもは32万円)を仲介する業者に支払い、大借金をして来日した彼らにとって、子どもにかかる月5万円は、大変な負担です。
経済的事情で、毎年10数人が数カ月で施設に来なくなるそうです。そもそも、最初から親が仕事でいないアパートで、子どもたちだけが留守番をしている家庭もたくさんあるそうです。
それでも、このミライはいつも子どもたちでいっぱいです。空きがないので、現在待機児童も4人います。それでも、口コミやSNSを通じて、この年末年始に新たに8人もの入所希望者があるというのです。どうして今、菊川市にブラジル人が集まるのでしょうか?
「菊川市にはウチのようにブラジル人の未就学児を預かる施設があと3つありますが、朝から晩まで面倒を見ているのはここだけです。日本中探しても、そんな保育所はほとんどありません。だから、ブラジルからみんなネットで調べてここに来るんです」と黄地理事長が解説してくれました。
我が牧之原市にも、ここ数年大量のブラジル人家族が移り住んできています。私の妻が放課後児童クラブの指導員として働いている細江小学校では、全児童の10数%がブラジル人です。市の学校教育課や教育委員会では、県に対して通訳や指導員の加配を求めていますし、両親には入学前にはミライのような施設で「最低限の日本語の習得」をお願いしています。月額5万円の…。
牧之原市にはミライのような託児所も外国人学校もありません。。しかし…「大石さんはご存知ですよね? ここの子どもたちの親の大部分は、牧之原市の企業の工場で働いているんですよ。ここは狭いし駐車場もないし、毎朝牧之原市まで子どもたちを迎えに行ってるんだから…条件さえ合えば、私は牧之原に移ってもいいんです!」と黄地理事長は、こともなげに言い切りました。
「これは、早急に手を打たなければいけない課題だな!!」と痛感しました。財政的支援はもちろん、抜本的対策を市や県と一緒に考えたいと決意しました。着手もしていない段階で…わざわざここに書いたのは、自分自身に〝有言実行〟を迫って、追い詰めるためです!(笑)
みなさまのご協力やご意見、ご指導をお待ちしています!!
【注】子どもたちの写真掲載は全家族の了承済みです。