素晴らしき同級生
同級生のH君の工場にお邪魔しました。私が、川崎小学校の「読み聞かせボランティアで使いたいなあ」と思っていた地域の民話集の続編が、彼の自宅にあると聞いたからです。
貸してもらった興味深い本の知られざる民話の数々は、またおいおい紹介するとして…気の置けない友人との久しぶりの雑談の流れで、私はお父さんの代からの精密部品加工場を今は1人で切り盛りしているH君の仕事内容や鮮やかな手さばき、そして彼の2人の高校生の親としての信じられない近況の〝取材〟に夢中になってしまいました。
高校卒業後から30年以上、旋盤加工職人として、この地元で頑張ってきた彼の本日の業務は…「長さ2m、直径1.6㎜のステンレス製の細長い医療機械用の管を50㎝x4に切断してから…切り口が歪んだり反ってしまった直径0.2mmの穴を…直径0.1mmのドリルを使って端面加工(修正)する」という、不器用な私には気の遠くなるような超精密作業でした。
「凄いね! でもこの作業って、そろそろロボットやAI(人工知能)に取って代わられちゃわない?」という、私のかなり失礼な質問に…H君は「今のところは大丈夫。発注量が少ないし作業単価が安いから。機械だとプログラムやら調整やらで、かえって高くついちゃうんだよ」。。カインズで買ったという格安の3000円のヘッドルーペで、3.5倍の大きさになっている目を細めて微笑みました。
H君の凄いところは、奥さんとともに子育てにも全身全霊を傾けていることです。文武両道に励む環境を与えられた高3の息子さんは、サッカーの名門校で活躍しました。今春には、娘さんが某団体スポーツで有名な県東部の私立高校に特待生で入学。御夫婦は、朝は5時、夜は10時すぎに島田の六郷駅まで1日2往復、交代で送り迎えをする毎日を送っています。そのかいあって、娘さんは1年生ながらレギュラーとして県大会を制覇。年末には全国大会に出場します。素晴らしいですね!!
「大変な生活なんだけど…コツコツ続けてきたから、こうやって報われることもあるよね? うれしいから本当は娘のことをもっと広めたいんだけど…今の時代はいろいろルールや制約があってね。だから夫婦で静かに喜んでいます」。子どものころとまったく変わらぬ謙虚で優しい表情で、H君は言いました。
仕事も子育ても、いつも中途半端。。五十路を過ぎても先の見えない私には、眩しくてため息の出るほどカッコいいH君の姿を目標に、これから固い信念を持って歩んでいきたいと思いました。