
昨年1月に、突如誕生した牧之原市勝間田区の『授かり石』物語!! 私がfbやブログで書いたその記事を読んだ名古屋大学博物館の吉田英一教授(56=応用地質学)と名古屋市科学館の西本昌司主任学芸員(52)が本日17日、はるばる名古屋市から牧之原市まで、初めて実地調査に訪れてくださいました。
世界中で産出される「コンクリーション」または「ノジュール」と呼ばれる数㍉から最大で約2㍍もある球体や繭型の硬い石の研究家として日本の第一人者のお二人は、牧之原の誇る西萩間の“遠州七不思議”『子生れ石』の周辺と『授かり石』の発見された坂部区坂口の土砂採取場を相次いで訪問。事情を聞いて集まった市内や静岡市の地質学愛好家らのみなさんとともに、目を輝かせて観察をされていました。
不思議なご縁でした。私の妻マリアネラがこの春、静岡市内のNPO団体の依頼で行った母国・コスタリカを紹介する『異文化交流教室』で、彼女が提示した1930年代からコスタリカの密林で発見されてきた巨大な石球(Stone spheres of Costa Rica)を見た参加者で、かつては相良高校の教諭だった水野まさ代さん(81)が、子生れ石との類似性を想像し、私たちにいろいろ質問をしてくださったのがすべてのきっかけです。
残念ながらコスタリカの巨石は火山性の花崗岩を人間が切り出し、加工した人工物なので、天然のコンクリーションである子生れ石とはまったく違うのですが…「牧之原市には最近、子生まれ石よりでっかい〝授かり石〟が発見されたんですよ!!」という私の話に飛びついた水野さんは、大喜びで専門家の吉田教授に詳細を報告。。そして授かり石を発見し、地元の神社に奉納した勝間田区の鈴木さん親子や牧之原市史料館の長谷川学芸員のご協力も得て、今回の現地調査が実現したのです。
「いや~! これはみごとなコンクリーションですね!! 素晴らしい! 静岡県でこんな見事な石が出るなんて、知りませんでした!」と吉田教授は大喜びで、川原に割れて転がっていた丸い石の破片に希塩酸をスポイトで垂らし…炭酸ガスの発生を確認してほくそ笑んでいらっしゃいました!
見事な球体で一見、人工物のようコンクリーションは、自然の産物で主成分は大理石と同じ炭酸カルシウムです。かつて海だった世界各地の地層に含まれていて、浸食された崖から転げ落ちたものも多いそうで…まさに大昔は海の底だった西萩間の谷川の壁から産出する〝子生れ石伝説〟と重なります。
石の中心部には魚や貝、カニ、アンモナイト、クジラ、首長竜など多彩な「海生生物の化石が1個入っている」のだとか、非常に堅い岩石のため風化に耐え、化石の保存状態は極めてよいそうで…貴重な伝承の石、大切な牧之原市の観光資源の石を割って調べる訳にはいきませんが(笑)…子生まれ石や授かり石の中に何があるのか? 想像するだけでワクワクします。
吉田教授は「物質は拡散していくのが自然なのに、炭酸カルシウムが一点に集まるのが不思議だな?」と、古生物学や地球化学などの研究者とチームを組んで謎の解明に挑戦。。ほんの3年前に、この石は物の軟体部分に含まれる炭素によってできることを突き止めたそうです。
海の生物が死ぬと、海底の泥や砂に埋もれた死骸が腐敗し、炭素などでできた有機物の酸が染み出す。これが海水中のカルシウムと反応し炭酸カルシウムに変化する。この反応は死骸の周囲に均等に進むので、炭酸カルシウムの塊は球形に発達し、死骸を覆うように丸く成長するそうなのです。
従来は、巨石の形成には数万~数百万年もかかると考えられていたが、炭酸カルシウムは急速にできるため「大きなものでも数カ月~数年。授かり石サイズでも10年はかかりませんよ」と吉田教授が、こともなげに言い切られたのにはびっくりしました!!
吉田教授らによって、つい最近、解明されたばかりのコンクリーションのメカニズム。。「なんとか牧之原市の知名度アップや観光振興の切り札に使えないだろうか?」…私の頭の中で、炭酸カルシウム? の夢と野望が、急速に膨らみ始めました!(笑)
