貴乃花親方の功罪
日本相撲協会の貴乃花親方(45)が今夜、テレビ朝日系「独占緊急特報!!貴乃花親方すべてを語る」にVTRインタビュー出演しました。
昨年10月の秋巡業中に弟子の貴ノ岩が被害を受けた元横綱日馬富士による暴行事件について、同親方は、協会側の最終報告書と、自分たちの認識に大きな食い違いがあると主張したり、先日の理事候補選でわずか2票で落選したことについての心境などを、聞き手役の映画監督・山本晋也さん(78)に激白しました。
この事件の発覚以来、並々ならぬ興味を持って事の推移を見守ってきた私だけに(笑)…前半は同じテレ朝系の人気番組だった『トゥナイト』、後半はNHKのドキュメンタリー『プロフェッショナル』か?? とも感じられた2時間をじっくりと視聴しました。
見終わっての感想としては…今まで、誰もが理解に苦しんでいた同親方の数々の謎の行動の真相が、ご自身の口から明確に解説され、一般の視聴者にはとても分かりやすく、共感を得られる内容だったと感じました。お話は想像以上に、理路整然としていましたし、一般社会の常識として「貴乃花の言う通り!」「相撲協会は本当におかしい」という世論が高まることは必至でしょう。
ただ、四半世紀以上昔の新聞記者デビュー当時は毎日毎日、当時人気絶頂の『若貴フィーバー』の周辺取材。。その後は、相撲はもちろん、相撲界OBがわんさかいて、大相撲よりももっと激しい〝村社会〟であるプロレスを取材していた元スポーツ紙記者としては、同親方のあまりにも〝正論〟を強調しすぎる物言いに、大きな違和感を感じずにはいられません。。そもそも6年前には、貴乃花部屋の元力士による「貴乃花親方の暴力」の告発が、週刊誌に報じられていもいますし…。
貴乃花親方が繰り返し解説していたように、大相撲の世界は、今もちょんまげ(大銀杏)をつけた力士たちが、神聖な土俵で伝統的な所作に則って闘いを繰り広げる〝神事〟なわけです。21世紀の日本人の感覚とは明らかに「違うルール」「独自の世界」が存在してきたわけです。今回の事件の核心は、相撲界が「世間と違うからいいのに…」という人と「世間と違うんだからダメなんだ!」という線引きをどこに引くか? にかかっていると私は思います。
もちろん、今の日本社会では、八百長や暴力は許されません。しかし、住んでいる世界が違えば見える景色も違うし、そこに外から一般常識だけを振りかざして、口を出すとおかしくなることも多々あります。。私は記者時代、元九重部屋の小結で、亡くなった千代の富士さんの後輩、現理事長の八角親方(元横綱北勝海)と同期入門だったプロレスラーの安田忠夫さんから、かつての相撲界のとんでもない〝内幕〟をよく聞いていました。
それこそ、昨今のトラブルなんて可愛く見えてくるような破天荒、豪放磊落のすごい事件や騒動(…昔も今も書けないww)がてんこ盛りでした。。何を言いたいかというと…貴乃花親方は、相撲界に入門する前からそういった角界の理不尽な暴力に代表される悪習や諸問題をずーと見てきて…「これじゃいけない!」「相撲界を変えなければ!!」と思ってきた。。それは確かでしょう。横綱昇進時の口上に入っていた『不惜身命』の四字熟語にも、並々ならぬ決意が込められていました。
※不惜身命(ふしゃくしんみょう) 修行のためには身命も惜しまない こと。死をもいとわない決意
しかし、その一方で、貴乃花親方自身も、その社会、その組織の『プリンス』として生を受け、一般人には計り知れないプレッシャーを背負いながら、努力は重ねて素晴らしい成績や偉業を成し遂げたけれど、それは決して自分1人の力でも、一途に相撲道に邁進したと同親方の言う先代貴乃花、若乃花の花田家だけの功績でもないわけです。
逆風や批判の中、理事候補選挙に立候補したことは立派ですし、意義はあったと思います。しかし、今回、自身が今も所属する組織を相手に「気持ちは戦います」と声高に宣言したり、特定のメディアにだけ独占取材を許し、一方的に自分の理想や意見だけを主張して、理事候補選挙後の現執行部に、改めて対決姿勢を鮮明することは、相撲界には何のメリットもありません。
相撲界を本当に変えたいならば、違うやり方はあったはずですよね。。むやみやたらに、自分の掲げる「夢」や「理想」を訴えて、猛進することは…心情は理解していた周辺の多くの人の気持ちまで逆なですることになりかねないし、かえって改革を遅らせるだけかもしれません。
虚心坦懐の表情で「自分の立ち位置が見えてきた」という貴乃花親方のコメントを、とても複雑な気持ちで聞いていました。
えっ?? 「お前が言うな!」「そっくり、そのまま自分に置き換えてみろ!!」ですって?? 最初の1行目からそのつもりで書いております!(笑)