クリスマスに命のプレゼント
<クリスマスの早朝に88歳のおばあさんが転落した勝間田川の現場>
地元でいつもお世話になっているSさんから、衝撃の大ニュースが飛び込んできました!
「おい。ケンちゃんやあ! この前、仲町の町内会長が、ちいっと信じられんほどスゴい人命救助をしただけえが…まったくどこからも表彰されてないだよ。それどころか、新聞にも載らなかったで、ほとんどの市民は知らないだだよ。。何とか市の方へ掛け合ってみてくれんかえ?」
「えっ? そんな話、ボクも知りませんがな!」。。。。ということで、元敏腕社会派記者? の血がうずいて、本日、各方面に突撃取材を敢行し、その全貌を把握しましたので、ご本人の承諾も得て、詳細をご報告いたします。
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昨年12月25日のクリスマスの早朝6時15分ごろ、私の住む牧之原市仲町町内会の中西晴俊会長(66)が、日課である3キロのウォーキングの最中に、市内を流れる勝間田川に転落した88歳のおばあさんの命を救いました。
夜明け前の暗闇の中、静波十丁目の曹洞宗釣学院裏の川のたもとに立っていた小さな人影を不審に思いながら、いつものように境内にある先祖代々の墓のお花の水を替え、1、2分後に道へ戻ると、人影は消えていたのだそうです。現場は上の写真のような見晴らしのよさだけに「あれ、おかしいな?」と目を凝らすと…水面から大きな波紋が広がっていくのが見えたのです。
慌てて、柵のない土手を駆け降りると案の定。。うつぶせになった老女が川面を流れていたのでした。「た、大変だ!!」。中西会長は大慌てで、トレーニングウエア姿のまま、極寒の川の中に飛び込んだのでした!!
腰まで水に浸かりながら、川に転落した際に出血して、ほとんど意識のなかったおばあさんを抱きかかえ、川岸に上げようとしましたが…全身に水を含んだ彼女は持ち上がりません。。「このままじゃ2人とも死んでしまう!」という恐怖に襲われながらも、中西会長は持てる力を振り絞り、川岸のコンクリート壁を背に絶叫しました。。「誰かー!! 助けてくれー!!」
叫び続けること5分、ついに近くのアパートから1人のおじさんが懐中電灯を手に、川までやってきてくれました。さらに、少し遠くからも住民の親子が2人。。。3人は協力して、会長が抱いていたおばあさんの服や腕を持って、護岸に引きずり上げてくれたのです。
しばらくすると、救急車やレスキュー隊員、警察車両も駆けつけました。中西会長は、助けてくれたみなさんに後を任せて大急ぎで家に帰り、今度はお風呂の残り湯に飛び込みました。生気が戻ってホッとしていると、警察官がやってきました。おばあさんは、隣の町内会の住民で、近年認知症が進み、早朝に自宅周辺を徘徊していたのだそうです。人通りのまったくない川端で、氷点下の寒さの中、中西会長のまさに身を挺した勇敢な救助行為がなければ、絶対におばあさんの命はなかったのです。
<おばあさん救助の時の様子を語る仲町の中西晴俊町内会長>
それから1カ月。。おばあさんの容体は回復し、今は養護施設で暮らしています。中西会長は、おばあさんの家族からも感謝されました。警察そして消防からも「人命救助で表彰したい」という打診がありました。しかし、なんと会長は、そんな申し出を断ってしまったというのです。「だって、あの時私自身も、住民のみなさんに助けてもらったんだから。。自分だけが表彰されるなんて、おかしいし、恥ずかしい。おこがましいとさえ思うんですよ」と優しい目を細めて話しました。
「警察の人に聞いたら、警察署の朝礼の時に偉い方が、私らのことを全署員の前で褒めてくれたんだって。今は一緒に暮らしていないうちの3人の子や5人の孫たちも、みんな「ジイジすごいね!」「カッコいいね!」って言ってくれたし、孫は「今度、ボクたちが表彰状をつくってあげるね」って。。私は、それで十分なんですよ」と照れ笑いするだけなのでした。
中西会長の素晴らしいお人柄に感動しながらも、なんだか釈然としない私は、市役所に電話を入れました。「痴漢や万引き犯を捕まえたとかいうのとは、わけが違うんですよ! 彼を表彰しないで、いったい市民の誰に感謝するんですか?」と言いました。市の担当課は丁寧に答えてくれました。「事情は十分把握しています。しかし、こういったケースは、市はあくまでも警察や消防を通じて動くのです。叙勲とかもそうですが、ご本人が辞退されている場合、こちらから一方的に表彰するわけにはいかないんです」
中西会長が「辞退」を口にしたのは、正義感あふれる謙虚なお人柄と、他の救助者のみなさんへの当局の対応が不明だったからです。他人が困っているのを見て見ぬふりをする人たちがあふれる現代社会で、中西会長の素晴らしい行為は全市民に知らしめなければいけません。新聞記事にもしてほしかったし、道徳の教科書にも載せてもらいたいぐらいです。
だから私は、照れまくる会長を必死で説得し、事件詳細と実名公開の許可をいただいたのです。優しい奥様の後押しもあり、もう拒否はされません!。。これをご覧の市役所幹部職員のみなさん!! どうか、静波区仲町町内会の中西晴俊会長に「感謝状」をお贈りください!! よろしくお願いいたします。
<事故現場周辺で落下防止の手すりの付け替えを行う作業員>
現場写真を撮影しての帰り道、100メートル上流の後川橋のたもとで、「歩行者転落防止用」の手すりを2メートルほど道側に付け替えている作業員2人を発見しました。「お!! さすが、われらが牧之原市役所! 対応が早い!」と感心しました。しかし、再び役所に問い合わせると…この工事は、昨夏から危険防止のために県に指摘されていた補修工事でした。。。。
今回、おばあさんが転落した付近も、その手前までつながっている侵入防止の鉄柵が途切れている場所でした。「以前から、住民の要望は聞いています。これまでは予算の都合で(柵が)建設できませんでしたが、今回の件を教訓に、新年度以降なるべく早く対応するつもりです」(維持管理課)
最後の最後で、とても温かく心強いコメントをいただきました。